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ちょっと競馬歴の長い人なら誰でも知っている馬ネーハイシーザー。
この馬が実は覇嵩崖璽だったといったら驚くのではないだろうか。
-990年生まれ、父サクラトウコウ。さほど目立つ血統でもなかったネー
ハィシーザーは3歳(当時Ⅱいまの2歳)での新馬戦を快勝すると、4歳では
重賞『中日スポーツ4歳ステークス(GⅢ)』を勝利。5歳古馬になってから
はさらに能力が開花して『大阪杯(GⅡ)』『京阪杯(GⅢ)』『毎日王冠(GⅡ塵、
そして3番人気を背負って出走した弘年の『天皇賞・秋(GI二では、ビワハヤヒデ、ウイニングチケットなどの強豪勢を負かして、ついにGI馬になる。
その後は屈健炎などを患って勝ち星に恵まれず、船年の京阪杯が最期のレース
になってしまうが堂々の種牡馬入り。まさに雑草からトップまで上り詰めたよ
うな馬である。
この馬が歩んできた時代のウラには、日本のバブル景気があ
った。
日本におカネがジャンジャン溢れていた時代、競馬界にもお
カネがドッと流れ込んで、サラブレッドの価格はかなり上昇し
ていた。海外から優秀な血統のマル外を買いあさり、繁殖牝馬
にしても海外からどんどん優秀な血統をつれてきていた。
日本国内でもサラブレッドはつくれば売れる時代であった
が、やはり地味な血統はどうしても二の次、三の次に。同じ帥
年でいえばトニービン産駒が大活躍をしている時代、現役時代
さほどパッとした成績を残せなかったサクラトウコウ産駒など、あまり期待されていなかったのも当然である。
北海道、浦河のO牧場。
ある日、柵のなかに見慣れない馬が一頭いた。
「どこからきたんだこの馬?」
ご存じのとおり、牧場の周りには「柵」ってものがある。
ブラッドスポーッ。血統が重要視される競馬において、馬が勝
手に行き来できるような状況があってはならないからだ。馬が勝手に出入りして、勝手に繁殖でもされたら大損害となる。
そうはいっても北海道の広い土地にある牧場で、端から端まで全部きっちり
と高いフェンスを立てておくなんてことはコスト的に無理。まあ、人間の胸の
高さほどある柵で仕切られているところもかなり多いのだ。そのやり方で間違
いなくやってきたので大丈夫だと誰もが思っていた。
だからこそ、自分の敷地内に見慣れない馬を発見した人は驚いた。仕切りの
柵を飛び越えてきたとしか考えられない馬が、いま自分の目の前にいる。
「野良馬か?」
この馬こそが仔儀騎代のネー八イシーザーだった。
牧場の人は、苦笑した。
「どこの馬の骨かわからない」ってよくいうけど、こいつはまったくどこの
馬の骨なんだ(笑)。なんだ、ウチの牧場にきたかったのか?
考えていると本当に可笑しくなってきた。キョトンとしている馬が可愛く見
えてきた。仕方なく、近所の牧場仲間に片っ端から電話して「おたくの牧場か
ら馬がいなくなってませんか?」と聞いてまわった。すると、すぐに裏の牧場がその馬の持ち主だったことがわかった。
しかし電話の主からは意外な答えが返ってくる。
「あ-、あの馬ですか。なんだったらそちらで預かっておいてください」
確かに血統もよくない馬だ。
どちらかといえば今後活躍できる可能性のほうが低い。しかも牧場にいれば
飼い葉代がかかるから、早い時点で処分してしまうという判断もあるにはある。
良血全盛時代、景気のいい話はどこにも転がっていた時代だからこそ、そんな
答えが返ってきたのだろう。
だが、O牧場の人は思った。
「柵のどの部分を越えてきたのか知らないけど、それにしても度胸と跳躍力
はハンパじゃないぞ。こいつひょっとしたら大化けするかも?いい障害馬になるかもな」
結果、元所有者の言葉に甘えて野良馬シーザーをいただいてしまった。
大変だと思っていた事務的な面にしても、当歳時で血統書の提出と特徴検査
の前だったので、生産牧場の登録などもすんなりパス。晴れて、O牧場の所有馬となった。
数ヵ月後、その逸話を知った布施調教師が馬主の大丸企業さんに購入をすす
め、その後は最初にいったとおりの大活躍をするのである。
まさに雑草魂。ネーハイシーザーは野良馬だったのである。
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